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KEN NAKAHASHIでは8月4日(金)から8月26日(土)まで、ステファン·サラザン氏による企画·キュレーションのグループ展「ワンカップ、ラ·プティット·タス」を開催します。

絵画、写真、シネマ、メディアなどの視覚芸術媒体は、歴史的流れの中で、表現における許容の限界を押し広げてきました。

絵画表現ではフラゴナールからピカソ、写真の文脈ではマン·レイからロバート·メイプルソープ、また映画界ではベルナルド·ベルトルッチからハーモニー·コリンなど、革新的な名作を世に送り出して来たこれらの作家·監督は、セクシュアリティを明るみに出し、エロティシズムや禁断、そして罪などについて物語り、鑑賞者に新たな認識や知性を与えてきました。

それはまた、社会的認識上の規制や価値へと立ち向かった勇敢な行為でもありました。

ありとあらゆることをインターネットで得られる現代、芸術は世界中に氾濫するネットを媒体にしたイメージの増殖のスピードに追いつくことができない状況にあります。しかし一方で、そういった消費的で性的なイメージには、人の記憶に残り魅了し続けるような”力”が欠けていると考えられます。

例えば、ピカソの「アビニヨンの娘たち」は伝統絵画への破壊的挑戦でしたが、この歴史に残る裸体群像は今もなお人々を魅了し続けています。また、2012年に公開されたハーモニー·コリンの映画「スプリング·ブレイカーズ」に登場するネオンカラーのビキニに覆面姿の女子大生4人組は、現代版裸体群像を想起させ、その斬新なビジュアルとストーリー展開により、映画界や一般観客の間で賛否両論を引き起こすなど世に議論を巻き起こしました。

本グループ展「ワン·カップ、ラ·プティット·タス」は、現代のアーティストが、21世紀においてのジェンダー·リアリズムやポスト·エロティシズムとどう反応することができるか、そして挑発、暴露、逸脱の議論の先に進んだ領域で作品を制作することについて問いかけます。

この問題は、今回紹介する作家をはじめ、現代のアーティストに向けられた挑戦でもあります。

展示では、東南アジア、ヨーロッパそして北米など世界各国の、新進気鋭から世界的に活躍するベテランまでキャリアもさまざまな作家の、絵画、写真、映像作品を展示します。

本グループ展のタイトル「ワンカップ、ラ·プティット·タス」は、自動販売機でいつでも買える酒の”謎”のように、かつては禁じられていたものが何時何処でも手にはいる事象の有様を示唆します。

また、「ラ·プティット·タス」という言葉は、快楽目的の性交を「小さな死」と説いた思想家ジョルジュ·バタイユが仏語で小さなカップ·女性器の意味を持つ同語に擬えてエロティシズムの快感を言及したものです。

エロティシズムとそのイメージが蔓延し、その至高性が失われつつある今、本展「ラ·プティット·タス」で展示される「快楽の器」は鑑賞者の慾望を満たすことができるか。現代アートが秘めている可能性へと鑑賞者の意識を導くこととなるでしょう。

参加アーティスト:

  • サンドリオン·ベランジェ(フランス·カナダ)
  • クラリス·ロビン(フランス)
  • クレマンス(メキシコ)
  • ダリア·ジェ·パスカリス(フランス·イタリア)
  • レア・ル・ブリコント(フランス)
  • パスカル·リエブ(フランス)
  • サリサ·ダマランカー(タイ)
  • シェリー·シルバー(アメリカ)
  • スカイナ·ジュアル(モロッコ)
  • スティーブン·ラック(カナダ·アメリカ)
  • トム·ド·ペカン(フランス)
  • トラヴィス·クローゼ(アメリカ)