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KEN NAKAHASHIでは2019年7月12日(金)から7月27日(土)まで、同年3月9日に死去した佐藤雅晴への追悼の意を込めて、個展「I touch Dream」を開催します。


本展では、佐藤が東京芸術大学修士課程を修了し、ドイツへ渡った1999年に制作した最初の映像作品で、これまで公開されることのなかった《I touch Dream #1》(Single Channel Monochrome Video、3 Minutes 34 Seconds)を発表します。

ドイツでの孤独な生活を過ごすなかで見ていた悪夢を木炭でデッサンし、一枚づつ(ワンカットづつ)撮影して、動画にした作品です。夢自体が不安定で断片的なイメージであるため、一枚の画に夢の断片を集約するのではなく、単純にひとつひとつの画を連続させることで、曖昧な夢のイメージをビジュアル化する方法ーアニメーションという表現方法ーに出会うことになりました。

夢の断片を執拗にトレースし写生を繰り返し、それを連続させた映像を日常にスライドさせることによって、私達が存在する現実世界と私達が見る夢の世界という相対的なふたつの世界の狭間に潜む「気配」を、表面化しようと試みました。本作がきっかけとなり、その後、主な代表作である「ダテマキ」「Calling」「東京尾行」などのロトスコープの技法を使った作風を確立していきました。


佐藤雅晴は1973年大分県生まれ。1999年東京芸術大学大学院修士課程修了後、デュッセルドルフ・クンストアカデミーに在籍、10年間滞在し、2010年日本に帰国。ビデオカメラで撮影した日常の風景を、パソコン上でペンツールを用いてなぞるようにトレースし、アニメーション化するロトスコープと呼ばれる表現を用いた作品で知られています。実写をトレースしさらに映像化されたモチーフがみせる「リアルでどこか奇妙な動き」は現実と非現実が交錯したような時間を感じさせます。

世界各国の主要都市で精力的に作品を発表し、2009年には第12回岡本太郎現代芸術賞特別賞を受賞、2011年には第15回文化庁メディア芸術祭審査委員会の推薦作品に選ばれています。2016年、原美術館で個展「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴ー東京尾行」を開催し、国内外から大きな注目を集めました。

2019年には森美術館での「六本木クロッシング2019展:つないでみる」、トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)での「ACT」シリーズ第1弾「霞はじめてたなびく」、そしてKEN NAKAHASHIでの個展「死神先生」を3箇所で並行して開催。8年以上闘病を続けている癌の担当医から余命3ヶ月を宣告された2018年9月以降、病状の進行に伴う視力の低下などにより映像作品の制作が困難になりながらも、その手を休めずにKEN NAKAHASHIでの個展に向けて、アクリル絵の具によるペインティング作品の制作に精力的に取り組んでいました。3箇所での展覧会が開催されているさなか、3月9日午前10時56分に、家族に見守られながら眠るように、45歳の若さでこの世を去りました。



展覧会詳細

  • 名称:佐藤雅晴「I touch Dream」
  • 会期:2019年7月12日(金)- 7月27日(土)
  • 会場:KEN NAKAHASHI (160-0022 東京都新宿区新宿3-1-32 新宿ビル2号館5階)
  • 開廊時間:11:00 - 19:00
  • 休廊:日・月


《I touch Dream #1》

1999、アニメーション、シングルチャンネル・ビデオ(SD、白黒、サイレント)、3分34秒 © Masaharu Sato

技術アシスタント: 佐藤 マイベルゲン 玲、モデル: 下城賢一