Exhibitions

 

KEN NAKAHASHIでは2017年11月17日(金)より12月23日(土)まで、ドイツ・ライプツィヒを拠点に活動するアーティスト、ヨッヘン・プロクシュテースとエリック・スワーズによる二人展「TSUKI 月」を開催します。


プロクシュテースとスワーズは、現実の模倣と精神的領域の視覚化という絵画表現の分岐構造の中で、古典絵画の印刷物などの複製物を、自らの絵画イメージの源として使用し、しかしオリジナルを模倣するに限るわけではなく、実物が産まれるにあたって用いられた画面構成の方式、視覚的イメージそのものとして存在する概念、その姿を分析します。

現実の模倣という形体付与と、その形体をキャンバスのどこに配置するかという法則を導く正五角形を連続させた色鮮やかな位相幾何学線や、黄金比を導く分割点やグリッド線などが独立してキャンバス上に立ち上がります。構図の主要観点を成す幾何学線の交差点と、配置される形状とが重なり、作家の先入観の及ばない領域=焦点が可視化されています。


ヨッヘン・プロクシュテースはダ・ヴィンチの「モナリザ」やピカソの「手を組んだハーレクイン」などのカタログに印刷された巨匠の名画や、ビートルズの「アビイ・ロード」のジャケット写真、シンディー・シャーマンの写真作品など、古典から現代アートにおける有名なイメージが印刷されたポストカードや、カタログなどの印刷物、時にはインターネット上から画像をプリントアウトし、実物ではなくその複製物を元に再複製する絵画で知られて来ました。

新ライプツィヒ派を代表する世界的アーティスト、ネオ・ラオホに師事しライプツィヒ視覚芸術アカデミーでマイスターシューラー号を取得。2011年にライプチガー・フォルクス・ツァイトゥング芸術賞を受賞。過去の受賞者にはネオ・ラオホや、マティアス・ヴァイシャーなどがいます。

2017年ライプツィヒ「Hildebrand Collection」でのグループ展「New Acquisitions」や、2016年ライプツィヒ「ASPN Gallery」での個展「Shanzhai」、2014年ハノーファー「Kestner-Gesellschaft 」や2011年ライプツィヒ造形美術館での個展など、ギャラリーや美術館にて多くの個展・グループ展に参加しています。作品はライプツィヒ造形美術館、ドレスデン美術館、ロンドンのZabludowicz Collection、ベルリンのSØR Rusche Collection、ライプツィヒのLeipziger Volkszeitung Collection、Sparkasse Collectionなど、ドイツの主要な美術館やプライベートコレクションに収蔵されています。


エリック・スワーズは、ブルグ・ギービヒュンシュタイン美術デザイン学校にて、プロクシュテースに師事し、2016年にディプロマ課程を修了。2013年から14年にかけて東京芸術大学にてO JUNにも学んだ気鋭作家です。

これまで、新ライプツィヒ派の超現実主義的絵画や、キリコなどの形而上絵画を彷彿とさせる、幾何学的なランドスケープを鮮明な色彩で画面いっぱいに描いていたスワーズ。プロクシュテースとの師弟関係の中で制作を続ける過程で、近年では水墨画を彷彿とするようなミニマルな要素が特徴となってきました。ジェッソと不透明水彩グワッシュを何層にも重ねて作り出された素地に、濃紺の薄い油絵の具で敢えて塗り重ねず、筆を運ぶときの勢いの強弱や、かすれを活かした渇筆の線で作り出されるスワーズの作品は一瞬の絵画とも言えます。古典絵画が印刷されたカタログ、インターネット上のイメージなどを創造の源に、あえてはっきりとした正面性をつくらず、様々な方向に視点を導く広がりを持ったイメージを描き出しています。

2017年ライプツィヒGalerie Kleindienstでのグループ展、2016年ライプツィヒSpinnerei Archiv massivでの個展、2013年JIKKAギャラリーでの個展、またKEN NAKAHASHIでは2017年アートフェア東京でのソロプロジェクトの他、これまでに2014年・15年・17年と3度の個展を開催しています。


[ライプツィヒと旧紡績工場シュピネライについて]

プロクシュテースとスワーズが拠点を構えるシュピネライは、かつてはヨーロッパ最大規模の旧紡績工場で、現在では100人以上のアーティストたちのアトリエや13のギャラリーや展示スペースを擁しており、ヨーロッパ有数の現代アートの発信地です。

ドイツ統一後に閉鎖された広大な施設を若いアーティストたちが注目してアトリエを構えるようになったシュピネライは、バッハやメンデルスゾーンなどの音楽・作曲家の街としても有名な旧東ドイツ第二の都市と呼ばれるライプツィヒ市街西部プラークヴィッツ地方に位置。

20世紀の建築・デザイン・工芸の分野に革命を起こたバウハウス、キルヒナーやエミール・ノルデなどによるドイツ表現主義ブリュッケ、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒに代表されるドイツロマン派・ドレスデン派、現代アートで注目されるベルリンなど、歴史的な流れの中で様々な影響を受けつつ、ライプツィヒ派と呼ばれるアーティストグループを中心にして美術が栄えていきました。

旧東ドイツにおける民衆の苦悩を代弁するものとして広く民衆から支持されるようになったライプツィヒ派からの伝統を引き継ぎ、現在では世界的に有名なネオ・ラオホを筆頭に「新ライプツィヒ派」が新たな興隆を見せている。ネオ・ラオホのマスター・ステューデントであったヨッヘン・プロクシュテースと、さらに若い世代のエリック・スワーズは、絵画の内的な原則の解明に身を投じ、その探訪の記録を自らが産む新たなイメージとして発表し、意欲的に活動しています。


[展覧会タイトル 「TSUKI 月」について]

月は、私たちや自然に静かに大きな影響を与えています。

フィボナッチ数のように自然界に存在する美しさの定理やルールも、月の明るさと暗さのコントラストが一定の周期で変化して行くように、止めることはできないダイナミックな力です。

その瞬間ごとのインパクトはプロクシュテースとスワーズの作品にも溢れ出ています。

新ライプツィヒ派の次の世代を担う二人の注目作家によるこの貴重な展覧会を是非ご高覧ください。


展覧会概要

  • 名称:TSUKI 月
  • 会期:2017年11月17日(金)- 12月23日(土)
  • 参加作家:ヨッヘン・プロクシュテース、エリック・スワーズ
  • 会場:KEN NAKAHASHI (160-0022 東京都新宿区新宿3-1-32 新宿ビル2号館5階)
  • 問い合わせ:03-4405-9552
  • 協力:ASPN Gallery Leipzig, Galeire Kleindienst