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EXTENDED! 8月2日まで

森栄喜「シボレス | 破れたカーディガンの穴から海原を覗く」

2020年6月24日(水) - 8月2日(日) ※会期を2週間延長しました

  • KEN NAKAHASHI (160-0022 東京都新宿区新宿3-1-32 新宿ビル2号館5階)
  • 事前予約: 予約を申し込む
  • 開廊時間: 水・木・金 11:00 - 19:00、土・日 11:00 - 17:00
  • 休廊: 月・火


KEN NAKAHASHIでは、2020年6月24日(水)から7月19日(日)まで、森栄喜による個展「シボレス | 破れたカーディガンの穴から海原を覗く」を開催いたします。

本展は、森栄喜による同ギャラリーでの3度目の個展となります。初のサウンドインスタレーションを発表いたします。小さな音を遠くへ飛ばすために用いられるホーンスピーカーから、森が綴った詩を多言語で朗読する様々な声色のささやく声が発信されます。ギャラリーの展示空間でそれらの声は、地球のどこかから周り巡って届いた初めて聞く、誰かの懐かしい声のように感じられるでしょう。

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【森栄喜による作品解説】

合言葉―Shibboleth

展覧会タイトルである合言葉Shibbolethという単語から、どんな文言をイメージするでしょうか。

このインスタレーションのために書き留められた15個の合言葉は、象徴的なものや出来事についてというよりは、言語化さえされてこなかったような、日常の中での、すぐに過ぎ去ってしまうような光景、ほんのささやかな思いや感情を書き綴ったものです。

それらの合言葉を、年齢や住んでいる都市、言語、国籍、宗教、セクシャリティー、それぞれが全く違うバックグランドを持つ25名の友人たちに、一番好きなものをひとつだけ選んでもらい、 唱えてもらいました。合言葉は、馴染みのない言語により、たどたどしく頼りなく、それでいて、 乳児が発する喃語のように、初々しくまっさらに発せられています。

 自分の中に残る、たくさんの声の存在

第一言語ではない言葉と模倣した発音が、どの程度、そしてどのように伝わるかは、全くわからず、不安のまま、ひとつひとつの言葉を、ただただ心を込めて読むことしかできない。そんな状況で、彼らの声は録音されました。

一日の時間、一生の時間の流れの中を行ったり来たりしながら、異なる描写深度の2節により成り立つひとつの合言葉。それらが同一人物により発せられ、自己対話のように応答されることにより、別の時間軸の存在、記憶や感情の鮮明さ、緻密さ、曖昧さが、その声とともに、ありありと立ち現れてきます。

そして、遠い過去、今日、そして未来で、発せられないまま飲み込まれた声、やっとの思いで発してもかき消されてしまった声、祈りとともに叫ぶ声、愛おしさにやさしく投げかけられるだろう声... 私たちは自分の中に残る、たくさんの声の存在に気づきます。

 「音」という地平

様々な声や言語が、合言葉を通し、即興的になぞられ、反復され、重なり合っていき、その存在感を際立たせながらも「音」という地平に、静かに鎮座していきます。そのひとつひとつが、共鳴し、時には反発し合いながらも、ゆっくりとつながり、連帯してきます。

言葉が、声へ、そして音へと変容し、抽象性や匿名性を高めつつも、集積や共有を経た先に発現する「親密な音・開かれた合言葉」。耳元でささやかれているように、遠くから呼び止められる ように、身体に、展示空間に響き渡るその「音」を、ぜひ体感してほしいと思います。

森栄喜

2020年6月

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展覧会に併せて、「週刊読書人」で連載された森による短編「Letter to My Son」全25回の日英テキスト、同タイトルの映像作品からのスチール写真、また未発表の詩作品1篇を収録した、初のフォトエッセイ「Letter to My Son」をKEN NAKAHASHIより刊行いたします。

森は、セクシャルマイノリティーをはじめとする多様性のあり方を主題とした写真作品で特に知られていますが、近年では、映像、パフォーマンス作品、文章や詩など、多岐にわたる表現方法を展開してきました。近年のパフォーマンス作品では、自らの体験や記憶を交えた「詩」の朗読や、他者との共演により、自己と他者の境界を探り、身体的な対話を試みてきました。それらは、ともすれば消えてしまいそうな小さな声を、小さな声のまま、公共に開き、そこに生まれる親密性を可視化する試みともいえます。

過去2度にわたるKEN NAKAHASHIでの個展開催を始め、2018から2019年にかけて東京都写真美術館で開催された「小さいながらもたしかなこと 日本の新進作家vol.15」展や、2017年と2018年、2度のフェスティバル/トーキョーへの参加など、美術館や芸術祭でも積極的に活動を続け、ジェンダーやセクシャルマイノリティーを取り巻く環境について、様々な意見を導き出してきました。

これらの写真集や、展覧会、自らの体験や感情を交えた「詩」の朗読のパフォーマンスなどを通じて、セクシャルマイノリティーをはじめとする多様性のあり方について自身が体感する「問い」を、社会や公共空間に投げかけ、社会の中で見過ごされてしまうかもしれないものに森自身も参与し続けてきました。これらの森の活動は、国内外でも広く反響をもたらし始めています。

森はこれまで、4冊の写真集を出版。2014年には、写真集「intimacy」で第39回木村伊兵衛賞を受賞しています。KEN NAKAHASHIが刊行する「Letter to My Son」は初のフォトエッセイです。書評専門誌「週刊読書人」で、2018年7月~2019年1月にかけて連載された同タイトルのエッセイは、9.11前のニューヨークと現代の東京を舞台に、ある詩人とアーティストが登場する、森にとって半自伝的な出会いや別れを描写した物語です。

本フォトエッセイの刊行にあたり、クラウドファンディングプラットフォームのmotion galleryにて、2020年3月28日(土)より4月24日(金)までクラウドファンディングを実施しました。皆様のご支援、改めて感謝申し上げます。

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【森栄喜によるメッセージ】

このエッセイは、半自伝的なものではありますが、同時に、かけがえのない出会いや、避けることのできない別れ、時間を越えた友情や愛情についての、普遍的な物語でもあると思っています。

僕が想像できる範囲なんて、ほんの小さなものだと思いますが、それでも、これまでの時代、今日、そしてきっと未来も、僕たちのすぐとなりで(または遠いところで)、本当にたくさんの発せられないまま飲み込まれる声、やっとの思いで発してもかき消されてしまう声があります。それは僕たち自身の届かない声かもしれません。

この物語には、実在の詩人やアーティスト、お店などの名前がたくさん出てきますが、主要な登場人物たちの名前は記されていません。名もなき彼・彼女らの声の中に、あなたが、そして多くの方が、これまで飲み込んだ声、祈りとともに叫ぶ声、愛おしさにやさしく投げかけるであろう声を、見つけてもらえたらと強く思っています。

この本が、この声が、多くの方に届きますように!

森栄喜

2020年3月19日

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森栄喜は1976年石川県金沢市生まれ。パーソンズ美術大学写真学科卒業。写真集「intimacy」(ナナロク社、2013年)で第39回木村伊兵衛写真賞を受賞。近年の展覧会に個展「Letter to My Son」(KEN NAKAHASHI、2018年)、グループ展「小さいながらもたしかなこと 日本の新進作家 vol.15」(東京都写真美術館、2018-2019年)など。その作品は、SUNPRIDE FOUNDATIONや東京都写真美術館などのパブリックコレクションを始め、数多くの個人コレクターに所蔵されています。


展示風景Video

Recorded: 2020年6月18日


Recorded: 2020年6月28日


Recorded: 2020年7月5日


Recorded: 2020年7月31日


Excerpt


The Artist

森栄喜

BIO

  • 1976年 石川県金沢市生まれ
  • 2001年 パーソンズ美術大学写真学科卒業

BOOK

  • 『Letter to My Son』(KEN NAKAHASHI、2020年)
  • 『Family Regained』(ナナロク社、2017年)
  • 『intimacy』(ナナロク社、2013年)
  • 『tokyo boy alone』(レボリューション・スター・パブリッシング、台湾、2011年)
  • 『CROWS AND PEARLS』(Edition Nord、2009年)

serial story

Media Coverage

selected work