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KEN NAKAHASHIでは、2024年9月13日(金)から10月12日(土)まで、スウェーデン出身、東京在住のヨーガン・アクセルバルによる個展「火は火みずからを滅ぼすだろう」を開催いたします。

当ギャラリーでの2年ぶり4度目の個展となる本展覧会では、アクセルバルの写真作品に詩人、高橋睦郎の詩を組み合わせた新作が発表されます。


アクセルバルは、友人や花を被写体にしたポラロイド写真シリーズで広く知られています。彼の作品には、静かに流れる時間と清らかな孤独感が漂います。使用されるポラロイドはピールアパートタイプと呼ばれるもので、撮影直後からフィルムが化学反応を起こし、温度や湿度、剥がす際の力加減などが最終的な作品に微細な影響を与えることが特徴です。撮影したポラロイドをスキャンした後、その画像をパソコン上で細部まで確認しながら大幅に拡大、引き伸ばすことで、元の写真には見られなかった微細な粒子やノイズが浮かび上がります。感情の混在を象徴するような色彩のグラデーションに浮かび上がる朧げな人物の輪郭からは、静寂や内省、そして感情の深層に触れるような感覚が呼び起こされます。

さらに、今回の作品では初めて和紙にプリントし、木のパネルにマウントする技法を取り入れました。和紙ならではの柔らかさや温かみのある質感が際立ち、静かに佇むような存在感が生まれています。


近年、アクセルバルはナチスのホロコーストで使用されたガスの開発に関わったフリッツ・ハーバーの複雑な生涯にインスピレーションを受け、第二次世界大戦中に日本の秘密化学兵器が開発されていた大久野島について調査を行ってきました。さらにアクセルバルは、2017年に写真集『Go to become なりに行く』で自身の写真に詩を捧げた高橋睦郎を訪れ、人間の行動やその結果が残す痕跡、そして現代でも続く戦争について、共に対話を重ねてきました。高橋は、この作品にも応じ、「火・ぼく・記憶」という詩を新たに書き下ろしました。アクセルバルは個展のタイトルに、高橋の詩の一節を引用し、こうして二人の作品が再び共鳴し合い、展示されることとなりました。



ヨーガン・アクセルバルは1972年、スウェーデン生まれ。15年間ニューヨークで活動した後、2011年より東京を拠点にしています。2013年には、アメリカ版VOGUE誌とボッテガ・ヴェネタ主催の「NEW EXPOSURE賞」でインターナショナル・ウィナーを受賞。2014年には、7年間に渡って東京で撮影した《I was looking for Park Hyatt Tokyo》を発表し、第18回文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品として国立新美術館で展示されました。2017年には、高橋睦郎との初のコラボレーション写真集『Go to become なりに行く』(roshin book、2017年)を発表しています。




【展示概要】

ヨーガン・アクセルバル「火は火みずからを滅ぼすだろう」

  • 2024年9月13日(金)ー10月12日(土)
  • 開廊日時: 火ー土 13:00-20:00
  • 休廊: 日・月
  • オープニング:9月13日(金) 18:00~20:00

高橋の詩は、ウェスタンミシガン大学の日本文学と翻訳学の教授であるジェフリー・アングルス氏によって英語に翻訳されました。

また、ドイツのアーティストArigtoは、写真作品と詩にインスパイアされ、サウンドスケープを作曲。その音楽はギャラリーで聴くことができます。また、大阪のレーベルDepth of Decayから限定版カセットとしてリリースされる予定となっています。




火は火みずからを滅ぼすだろう
火は火みずからを滅ぼすだろう
火は火みずからを滅ぼすだろう
火は火みずからを滅ぼすだろう
火は火みずからを滅ぼすだろう
展示風景 (撮影: 齋藤裕也) Installation View (Photo by Yuya Saito)