Exhibitions

 

井原信次「Love Your Neighbor 2021」

2021年3月3日(水)-4月18日(日)

  • KEN NAKAHASHI (160-0022 東京都新宿区新宿3-1-32 新宿ビル2号館5階)
  • 事前予約制: https://airrsv.net/kennakahashi/calendar
  • 開廊時間: 水・木・金 11:00-19:00、金・土 11:00-17:00
  • 休廊: 月・火

KEN NAKAHASHIでは、2021年3月3日(水)より4月18日(日)まで、井原信次による個展「Love Your Neighbor 2021」を開催いたします。


2019年、井原は知人からの誘いで、南極大陸の旅へと向かいました。アルゼンチン最南端の港町ウシュアイアを出発し、約2週間の船旅に出ます。日本語が通じず、インターネットにも繋がらない状況で、孤立感を味わいながらも、船内に設置された船酔い袋と鉛筆を使って、船内スタッフや世界各国からの乗客たちを描き始めました。こうして見ず知らずの人と対話しながら、井原は旅を通じて、大切なものを見つけていきます。

本展では、南極の旅で出会った人々を描いたドローイング、出会った時の印象や出来事を記録した文章とカセットテープ、記憶を留めるために残していた写真や映像、帰国後に集め始めた記憶の接続点となる些細なものなどが組み合わせられます。

井原信次はこれまで、友人などの身近な存在、自画像などのポートレートを主に描いてきました。社会やコミュニティーから感じる孤独感が、同時に、他者ともっと繋がりたいという作品制作の根源であると井原は言います。

2018年10月、当ギャラリーにて開催した個展「MEYOU」で発表したMEYOUシリーズでは、自己(ME)と他者(YOU)の距離を近づけようと、SNS上で繋がり交換した画像や言葉のやりとりを元に、本当の名前も住んでいる場所も知らない人たちを描きました。

インターネット、SNSという時空間を飛び越えて移動する情報のやりとりから作品化された「MEYOU」シリーズとは対照的に、本展で発表する「Love Your Neighbor」シリーズは、クルーズ船の旅という、交通/移動のインフラ上を行き交う見知らぬ人と、コミュニケーションを重ねていくことで生まれていきました。


現在、世界はパンデミックによってこれまで見えづらかった分断が可視化され、私たちの間にはソーシャルディスタンスによって物理的距離だけではなく、不信感や差別などの心理的距離をも生んでいます。それは、誰もが問題の当事者となりうることを露呈したのではないでしょうか。そこで本展では、「隣人愛(Neighbor Love)=あなた自身のようにあなたの隣人を愛さなければならない」という倫理の実践と、記録を一つのインスタレーションとして構成し、その体験を通して鑑賞者と社会の問題を身近に引き寄せます。


以下、個展に際して井原信次の文章を掲載します。


2020年1月から2月、KEN NAKAHASHIで開催したグループ展「one’s behavior」に、私はサウンドインスタレーションとして、南極に行く船の中で出会った人たちとの出会いを記録した10本のカセットテープを展示した。しかしそれは次第に再生できないカセットテープとなっていった。

日本にもコロナウイルス感染者が出始めた頃、社会は不穏で異常な空気に包まれ、漠然とした不確かな情報に人と人との間には隔たりが生まれ、何かに触れることさえ恐れ始めていた。見えないものへの恐怖やそこから生まれる予想外の障害は、社会が澱んでいる時ほど対人へと方向を変えていくのではないか。本展では、それぞれの自己から他者に優しく目を向け、私たち(WE)の中の自己として思考を深める場になることを期待している。


2021年2月13日

井原信次



3編のエピソード—「Love Your Neighbor」シリーズより

《Phillipp》


《James》


《Olga and Fabian》



Update: August 28, 2021

【井原信次「Love Your Neighbor 2021」アーカイブ冊子PDFを以下のDropboxからダウンロードしていただけます】

https://www.dropbox.com/sh/0vqv4ywaxx1909b/AACXCGAmcUl8PjR_z6dqoTJca?dl=0