Exhibitions

 
個展のタイトルの一部である「溺れる」という言葉は常に水と関わっている。
人は水に溺れる。 霧とは、空気中の微細な水滴であり、水と比べると儚く希薄なものである。
しかし、そんな霧にすら呼吸を奪われ苦しむ人がいる。ある人は彼らを弱者と呼び、またある人は彼らを負け犬などと呼ぶかもしれない。 微細なる心柔らかき人々は常に他者の傲慢さに傷つき利用され、つま先立ちで肩をすぼめながら生きている。 なぜ、誰もが彼らの心の柔らかさ、美しさに目を向けないのか。
なぜ誰もが彼らの誠実な苦しみを蔑み、その姿から目をそらすのか。 かつて私自身、霧に迷い、霧に溺れ、うつむき泣きながら歩いた道がある。 その記憶をたどるように私は制作を続けている。 誰もの前に立ち込める霧が
必ず晴れる日がくる事を
心より願いながら。 ー 野村貴之